なくてはならない飲食店。大半の店が誠実にやっている一方で、産地偽装、食品横流し、ブラックバイトなどネガティブなニュースも絶えない。そんな飲食業界の裏側を取材した。
高級店なら安心……はもはや過去の話
’13年に阪急阪神ホテルやプリンスホテルで発覚したエビの虚偽表示。安いバナメイエビを高級食材である芝エビとして“誤表記”していた問題だが、世間の注目を集めたのは信頼できるはずの高級ホテルが舞台となったことだ。
安全はカネで買えると錯覚しがちであるが、はたして一流店は絶対安全と言えるのだろうか……。『「外食の裏側」を見抜く』の著者であり食品業界に精通する河岸宏和氏は、こう語る。
「安い和牛を松阪牛と偽って提供していたしゃぶしゃぶ店の『木曽路』事件は氷山の一角。今の外食産業は、『安い食材をいかに高く売るか?』に心血を注いでいます。そもそも松阪牛だって、三重県で生まれた牛だとは限りません。
よそから連れてきて一定期間指定された地域で育てさえすれば松阪牛になるわけですからピンキリで、比較的安価なものを高値で提供していてもおかしくありません」
もっとも危険な「つくね」「ハンバーグ」などひき肉食品
そして“肉”でいえば、もっとも危ないのが「つくね」だという。
「ミンチになっているわけですから、何の肉を使っているかお客さんはわからない。本来食肉用ではない『廃鶏(卵を産めなくなった鶏)』が使われている場合もあります。
さらにひどいケースでは、『ボーンミート』といって骨の周りについた細かな肉を削ぎ取ったものを使っているところもある。このボーンミートはクズ肉同然なので植物性タンパク質や添加物を加える必要があり、さらに卵黄やタレをつけることで味をごまかします」
つくねは味の濃いタレや卵の黄身や薬味ネギなどを用いることで、臭みなどを抑えられる。そのためごまかしが利くのだとか……。また、つくねを割って、中の断面がそぼろ状ではなく魚肉ソーセージのようになめらかならボーンミートの疑いありだと河岸氏。
「つくねだけでなくミートボールやハンバーグも同様。一流店やホテルのバイキングなどでも、こうしたお客からわかりづらい部分で激安食材が使用されている可能性があるのです」
もちろん、つくねやハンバーグをきちんと作っているお店もたくさんあり、信頼できるお店で食べるべきメニューと言えるだろう。
銀座にある高級焼き鳥店で店長をした経験のある男性は言う。
「結局、その店が高級な理由はどこにあるのかってことなんですよ。地代の高いとこに店を構えりゃ、その分を上乗せするわけだし、高級な食材を使えば原価が上がるわけだから高くなるに決まってるよ」
高いから安心ではなくて、なぜ高いのかを考えるべきなのだ。