え? 避妊薬なのに不妊を予防する効果があるの?!
「不妊症の原因にもなる子宮内膜症が若い女性に増えています。ピルは子宮内膜症の予防と治療が可能ですから、不妊予防にも有効と言えるでしょう」(よしの女性診療所の吉野一枝先生)
でも、なんだか逆のような気もしてしまう。避妊薬で不妊予防が……?
「ピルは子宮や卵巣のトラブルを防ぎますから、10代20代から飲んでおけば、30代に入っても健康な状態を保てます。そもそも30代後半になると、女性ホルモンも低下が始まりますし、子宮筋腫や子宮内膜症を発症する人が多くなります。何もしない人はピルを飲んでいる人に比べていろいろなリスクが増え、妊娠しづらくなる可能性もあるのです」
子宮や卵巣をいい状態でキープできるのがピル、ということでしょうか?
「卵子の老化を止めることはできませんが、実際には、何もせずに30代後半になって妊娠を望む人と、若いうちからピルを飲んで、30代後半でいざ妊娠を望む人では、後者のほうがスムーズに妊娠するケースが多いんですよ」
開発当初から不妊改善効果に期待
「低用量ピルは1954年にアメリカで誕生したお薬で、実は歴史が長いんです。開発当時、本当にピルで避妊できるかどうかを試す治験を行った際、不妊症の女性たちが参加してくれたのです。妊娠したくない人は、万が一妊娠したら困りますからね。結果的にはピルを飲んでいるうちは誰も妊娠しなかったけれど、治験が終わった後で参加者が立て続けに妊娠したのです。つまり、不妊症にも有効だと、開発当時から立証されていたんですよ」
なんだかピルに関しては、まことしやかに言われてきたことがすべて逆なんですね。
「日本のマスコミが悪いんです(笑)。がんを予防する効果があるのに『ピルを飲むとがんになる』と騒ぎ、不妊改善につながるのに『ピルを飲むと不妊症になる』と言われたり。正しい情報を伝えずに、偏った報道ばかりするから! 誤解されたままなんですよね」
副作用が心配という声もありますが、実際のところどうなんでしょうか?
「最大の副作用は血栓症なのですが、これはピルに血液を固まりやすくする作用があるためです。この血栓が肺や心臓、脳に詰まると重篤な状態になるわけですが、そのリスクはピルを飲んでいない人の4倍になるというもの。ただし! ピルを飲んでいなくても、喫煙者は11倍に、妊娠時は13倍、産後12週あたりは30~40倍になるのです。つまり頻度としてはそんなに高いものではないということです。血栓症で亡くなる確率は交通事故で亡くなる確率よりも低いと思ってください」
血栓を怖がってピルを飲まないというのは、ちょっともったいない……。
「リスクよりもメリットの大きさを考えてみてください。自分にとって何がいいのか、おのずとわかるはずです」